遺産分割協議がうまくできないとき、遺産分割調停では、どうやって相続問題が解決できるのでしょうか?

目次

1 相続で、もっと簡単な解決方法は遺産分割協議?

そうです。

創造問題で、最もはやくて簡単なのは、なんといっても、話あい、つまり「遺産分割協議」で解決する方法です。

遺産分割・相続の事件は、弁護士が受任した場合、だからこそ先に遺産分割協議を試みることが多いでしょう。

円満な関係が相続人の間であるような場合は、他の相続人全員と話し合い、遺産分割協議書を作成して解決するのが、最も早く簡単です。

相続人が3人で遺産は6000万円だから、2000万円ずつにしよう。

マンションが3500万円なので、ひとりはこれをもらい、その人が1500万円を用意し、後の預金2500万円を500万円と2000万円もらう人に分け、500万円しかもらえない人はその1500万円を受けとる・・・・これでうまくいくね!

こんな風にうまく分けられれば、良いですよね。

でも、マンションがいくらになるかわからない、マンションを3人とも欲しがっている、誰も1500万円もの金額を用意できない・・・・・こんなことが通常です。

現実は、そううまくはいきません。

協議したけど、うまく分けられない、合意ができなかい場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てそこで協議をすることが、最善です。

弁護士が受任したあとでも、長期に協議をして調停申立てをしていないような場合も見受けられますが、それは依頼者にとって不利益であることが多いです。

時は金なりですからね。

弁護士に依頼したのに調停申立てをしてもらえない場合には、きちんと以下を確認したほうがよいでしょう。

【まとめ】弁護士が協議だけして遺産分割調停を申し立ててくれないときに確認するべきこと:

遺産分割調停を申し立てた方が不利になる理由があるのかあるのであれば、その説明をしてもらう
ないのであれば、なぜ申し立てをしてくれないのか説明してもらう
(着手金が必要であるとか、遠方の裁判所なので日当がかかるなど理由があるのか?)

2 相続について協議で解決できない時には、調停から始めるべきなのでしょうか、審判からなのでしょうか?

調停と審判のいずれを選択すべきかについて、法的な基準はありませんが、話し合いによる解決の見通しが全くない場合以外は、まずは、遺産分割調停を選択するべきです。

なぜなら、審判をいきなり申し立てると、家庭裁判所から調停に付されてしまうことが多い(裁判官が権限でまずは調停をやるようにと命じてくるのですよ。)ので、かえって最初の調停期日が遅くなります。

また、遺産分割調停で話をしたこと(主張と資料)はその後の審判でも使われますし、担当裁判官は調停の段階でそれらを見てくれているので、調停を経たことは決して無駄になるわけではありません。

たとえば調停の段階で別荘とかワンルームマンションだけ売っておいて、遺産を分けやすくしておくなどの工夫もできます。実際には、調停で代理人や委員のアイデアを出し合ってもっともよい解決を考え、合意できることが多いのです。

感情的な面も含めて、自己の主張を十分にしたいという気持ちがあなたに強いなら、調停に代理人と一緒に出頭して言いたいことを言うことで、あとあと後悔しないでしょう。

もっとも、多くの感情的な主張とか、証拠がない主張(例 : 毎月10万円の援助をしてもらっていたと主張したいが、何も送金記録などの証拠がないなど)については、主張をしても、審判では認定されないことが通常です。ですので、証拠がない主張についてこだわることは得策ではないでしょう。

これを覚えておきましょう!

相続(遺産)争いで大事で、覚えておきたいこと:

証拠がない主張は、他の人が認めてくれなかったら、適宜あきらめること!

これにこだわっても、裁判所は事実として認めてくれないので、疲れるだけです。

3 養子縁組が無効だとか、預金が使い込まれているとかか、前提事項に争いがあるとき、どうしよいのでしょうか?

誰が相続人であるのか(養子縁組が無効であるという主張をしているとこれが決まりません)、一定の財産が相続財産であるか争いがあるとき(預金が使い込まれてしまっていて足りない、名義は別の人だが実は亡くなった人のものであるというようなとき)、前提事項が確定していないと、家庭裁判所は、考えます。

その場合、それを解決させてから、再度、申し立てるように家庭裁判所はすすめます。

この理由は、複雑なのですが、こういうことです。

「家庭裁判所は遺産分割審判の前提たる相続権、相続財産等の法律関係につき当事者間に争いがあるときは、審判手続において右前提事項の存否を審理判断したうえで分割の処分を行うことができる」とする最高裁判例(昭和41年3月2日)があります。

ですので、何が相続財産なのかというような「前提問題」について家庭裁判所が判断ができるはず・・・・なのですが、この判断には既判力がない(後で、蒸し返しが可能ということで。す)ことから、紛争が後に再燃することをおそれて、家庭裁判所ではなく、地方裁判所等で前提問題を解決するように実務ではなっているのです。

ですので、あきらめるのか、裁判を別に起こして解決するのか、きちんと弁護士と相談しましょう。

使い込まれた預金などがあるとき、それが、生前の使い込みなら、遺産とは別の地方裁判所でのあ損害賠償事件になりますので、まずは遺産分割を先に解決が可能です。

4 遺留分侵害額請求(遺留分減殺請求)の権利があるとき、どうやって進めるのでしょう?

遺留分侵害の事件では、短期消滅時効があります。ですので、配達証明付内容証明郵便によって遺留分侵害額請求の意思表示をする必要があります

遺言があるけれど、もらえるものが少なすぎると思っている方は、この通知をまずは弁護士にしてもらいましょう。

それから、話し合いによって解決が可能ならしてみて、合意するのが難しい時には家事調停を申し立て、それでも解決しないなら、遺留侵害額請求訴訟を地方裁判所または簡易裁判所に提起するという流れになります。

当事務所の弁護士に相談にこられる多くの方の場合、遺留分の請求事件は基礎となる財産の範囲に争いがあったり、また特別受益の主張をするものがいるなど、証拠に基づいて明らかにしない限り、最終の合意ができそうもないことが多く、協議をしてみてそこで主張が対立していることが確認できたら、続けてだらだらと協議や調停をしないで、初めから訴訟を提起する方が、早期に解決する場合もかなりあります。

いずれにしても、方法は複数あるので、弁護士としっかり話をしてきめましょう。

弁護士との関係では、事件毎に着手金が必要になるので、そういうことも含めて弁護士とのきちんとした打ち合わせ、委任契約の締結が必要です。

5 相続の紛争があり、相続税の申告をしないといけないが、まとまってできないときどうしたらよいでしょう?

こういった相談は多いのですが、こういうご相談者は亡くなった方(被相続人)と、疎遠であったり、長男などが亡くなった方と住んでいて情報がない、相続争いがおこることが予想されていて、財産の資料ももらえないということが、多いです。

こういう場合、弁護士が当事者にいれば、冷静な進め方が可能になります。

まず、代理人弁護士が協議をして、どうやって相続税の申告をするか決めます。中立的な税理士に依頼して、互いにわかる範囲で資料をだして一緒に申告を進めるのが最も費用もかからないでしょう。それができない場合には、別の税理士さんにお願いすることもあります。

遺産が何かについては、相続税の申告が必要であれば相続人は申告のためにきちんと遺産目録を作成する必要があるので、税理士に必要な資料をだしていくことができるはずです。

しかし、税理士は、遺産を探してくれることはありません。

弁護士であれば相続人である依頼者にどうやって遺産をみつけていくか、アドバイスが可能です。委任状があれば、弁護士自身がそういった活動をして遺産をみつけていくこともあります。

遺産の調査も弁護士がする場合には、単に遺産分割調停や協議を依頼する場合とは異なり、時間もかかるので費用が追加になることはありますので、よく弁護士と協議しましょう。

6 弁護士は遺産を探してくれるのでしょうか?

さて、弁護士に依頼するにしても、あなたがわかっていない遺産がたくさんあるようなとき、きちんと遺産をもらえるのか不安ですよね。遺産の全体像は弁護士はどのようにして把握するのか、ご説明します。

6-1 まずは、誰が相続人かについて(相続人の住所はどこか)

被相続人の出生から死亡に至るまでの被相続人の戸籍謄本等を入手すればこれはたいていわかります。

兄弟姉妹が相続人である場合、被相続人の父母の戸籍謄本等も必要になります。

戸籍謄本等というのは、被相続人の除籍謄本と相続人の戸籍謄本が基本ですが、改製原戸籍謄本やさらに前の除籍謄本が必要となることもあります。

除籍謄本は、被相続人の本籍地の市区町村で交付を受けることができるので、弁護士であれば被「出生からの身分関係の分かる謄本をすべて申請」して、取得します。しかし、この場合、遺産分割調停など具体的事件を受任して、その受任事務の職務のために職務上の請求として取得できるのです。なにも理由がなく、弁護士といえども、戸籍等は取得できません。

本籍を転々としてきた方が亡くなると、本籍の移転したすべての除籍謄本が必要なのでかなりの量になります。

弁護士であれば、相続人の戸籍謄本もその本籍地の市区町村で交付を郵送でもうけられます。除住民票の保存期間の5年がすぎていて住民票の所在地がわからないときには、戸籍の附票から住民票の住所は確認できます。

6-2 弁護士がする、遺産である不動産の調査は?

亡くなった方(被相続人)が住んでいた家など所有していた不動産についてわかっているものは、弁護士は登記で所有関係を確認します。

それ以外に不動産があるような場合には、存在すると思われる市区町村の資産税課(東京の場合、都税事務所)から不動産の「名寄帳」を取り寄せることができますので、それでかなりがわかることがあります。

特別受益との関係では、「亡くなった人(被相続人)がもっていた不動産で、相続人がもらったものが過去にあったかということが重要です。これは何か知っていたら、弁護士に伝えましょう。非常に昔の贈与でも特別受益として持戻しができますので、自分以外の相続人がもらっていたものがあれば、弁護士に説明して登記をとってもらいましょう。

地番が分からなくて、どのあたりかしかわからない場合でも、法務局で該当箇所の住宅地図と公図とを対比して地番等を調べたりしていくことができます。これも弁護士に依頼しましょう。

6-3 弁護士は遺産の不動産の価格についても調べてくれるのでしょうか?

まず、相続との関係では、不動産の価格は一種類ではないことを覚えておいて下さいね。多くの方は不動産に対する固定資産税が評価額を基礎に決められているのは知っていますよね。

それ以外にも価格があるのです。

それは、まとめると以下の四つです。

【まとめ】相続トラブルで知っておきたい、不動産の価格の種類

① 実際の市場価格
② 固定資産評価額
③ 公示価格
④ 路線価(相続税評価額)

実際の取引がされている価格が市場価格です。税金の計算とは全く別のものです。そして、これが遺産分割で本来用いられる価格です。もっとも、東京のワンルームのように比較的明確に市場価格がわかるものもありますが、当事者で価格についてよくわからない、争いがあることも多いので、家庭裁判所では不動産業者の査定書をみても当事者で合意ができないときには、不動産鑑定士による鑑定評価額によって決めようとします。これには、費用もかかるので、低額なものであれば不動産業者の簡単な査定書を基礎に合意した金額を用いて、調停を成立させることも多いです。

6-4 相続争いで、弁護士は預金を探してくれるのか?

亡くなった方(被相続人)がもっていた預貯金については、相続人は、被相続人の死亡日の残高証明書とか取引履歴を取り寄せることができるので、弁護士にそれを依頼することもできます。株式や投資信託なども同様で、弁護士は資料をあつめて探すことができます。

口座番号までわからなくても、金融機関の支店がわかっていれば、残高証明書の交付を請求してみればよいです。

弁護士の相談でよくあるのは、預貯金をすでに相続人が使ってしまっているというもので、「一緒に住んでいた長男が毎月どんどん引き出していた、横領だ!」などという場合です。これについては、取引明細表を交付してもらえば実際にどのくらい引き出されていたのかは、わかってくるでしょう。¥。

そして、引き出しが高額であったり、不自然である場合、遺産分割調停で他の相続人に引き出した現金をどこに保管しているか、確認することで現金として遺産に含まれることがわかったり、葬儀費用に使っていることがわかったりします。

しかし、明らかに死亡直前に多くが引き出されたのに、一緒に住んでいて口座から引き出しをしたと思われる人が、自分は知らない、などと不自然な説明をするような場合には、地方裁判所にその人を被告として訴えて、不法行為に基づく損賠賠償請求をするという方法があります。遺産分割調停とこの訴訟が同時に進行することはよくありますし、不法行為の事件を先行させるということもあります。

相続争い、遺産分割トラブルで、遺産の預貯金が使い込まれているときの対処方法

まずは、疑わしい相続人から裁判所などで説明をしてもらいましょう

それでも、合理的に疑わしい場合には、その相続人に対して民事訴訟を起こすことを検討しましょう。

6-5 相続弁護士は遺産を探してくれるか?

被相続人の死後は、公証役場がわかれば、遺言の閲覧が請求できます。

遣言検索制度があるので、公証人が公正証書遺言を作成したとき、日本公証人連合会本部のコンビューターに登録するという制度ができているので、公正証書遺言があるかどうかわからない場合には、弁護士に委任して公証役場で遺言公正証書の存否を確認することができます。証書は、作成した公証役場がわかればそこから謄本を弁護士が入手できます。

6-6 相続弁護士は、株、自動車、退職金、保険等の遺産を探してくれるのか?

亡くなった方が直前に多額の退職金をもらっていたがどこにあるかわからないとか、上場株をもっていたはずであるが何株かわからないとか、保険契約があるが内容がわからない、車があったはずだがどこにあるかわからないなどの場合、弁護士法23条の2の照会制度で、調査が可能です。

【まとめ】弁護士に遺産などを探してもらえるのか?

* 不動産: 名寄帳でどんな不動産を保有していたのか調査してくれる
* 預金: 残高証明と取引履歴の取得で調査してくれる
* 公正証書遺言: 取得して内容を確認してくれる
* 保険や株、退職金の振込先: 23条照会制度で調査をしてくれる

7 相続争い遺産は、分けるまでどんなふうになっているのか?

7-1 相続の段階での遺産はどうなっている?

相続とか遺産分割とか、なんとなくわかっているかもしれませんが、法的にはどんなことなのでしょうか?それはイメージがわいていますか?

遺産分割とは、相続開始後、共同相続人の共同所有に属している相続財産を、各共同相続人に分配、分属させる手続です。

簡単にいえば・・・・

遺産分割 = 亡くなった方の残してくれた財産を相続人でひとりひとりのものにしていくプロセス

とうことなのです。

共同所有に属していると書きましたが、つまり、亡くなったとたんに、その人は財産をもてなくなるので、遺産は相続人のものになるのですが、相続人が数人いるような場合、一緒に持っている状態になります。

これが、遺産の共同所有になっているということになるのですが、民法では遺産共有といいます。

遺産についてまず知っておきたいこと:

☞ 遺産は死んだ人が死んだときから相続人のものになっている。
☞ 遺産は死んだ人が死んだときから相続人のものになっている。
☞ これを「遺産共有」という。

7-2 相続財産が、遺産共有になっているとはどういうこと?

遺産共有というのは、民法の条文があるものなのです。民法898条です。

898条

「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する」

この「共有」というものがどういう種類のものなのかについては、共有説と合有説という理論的に難しい争いがありますが一般の方は理解されていなくても、問題ありません。しかも、遺産分割の実務で、この理論が使われることはほとんどありません。

共同相続人が、遺産分割の前に遺産を処分してよいのかという点で、この理論が関連するのですが、民法では条文がすでに解決してしまっています。

民法909条:

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。

ただし、第三者の権利を害することはできない。

この条文でわかるように、分割前に共有部分を誰かが処分してしまっても処分は有効なのです。ですから、遺産分割協議をするまえに自分の共有持ち分を売ることができます。もっとも、共有不動産を買う人はほとんどいないので、遺産分割で共有でない状態にすることが、通常は「弁護士の仕事」となります。争っている人が不動産を共有していても、問題はややこしくなるばかりですからね。

8 では、遺産共有となった遺産はどうやって個人のものになるのでしょうか?

8-1 遺産が個人のものとなるプロセスには、4種類

(1) 遺言

亡くなった方が遺言を残すとたいていは、それに従って遺産が分けられます。

遺産を遺言で分割することができるのです。

遺言の条文はこれです。

【遺言の条文】民法908条

被相続人は、遺言で、分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができる

「分割の方法を定める」というのは、「妻には家と不動産を相続させて、長女には預金を、長男には別荘と株を相続させるというように、具体的な方法を遺言で決めておくということです。

それ以外に、相続割合を決めておくような遺言もあります。奥さんの相続分を2分の1ではなくて、3分の1にするなどという遺言も可能なのです。

これは民法902条が定めています。

【相続分を変えられるという条文】 民法902条:

1 被相続人は、前2条の規定にかかわらず、遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。ただし、被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。

2 被相続人が、共同相続人中の一人若しくは数人の相続分のみを定め、又はこれを第三者に定めさせたときは、他の共同相続人の相続分は、前二条の規定により定める。

つまり、遺留分を害する遺言でも無効にはならず、減殺請求の対象になるだけとされているのです。

各相続人の取得すべき遺産を具体的に定めてあれば、遺言執行者がいる場合にはそれに従って、分割がなされることになります。

しかし、相続分が指定されているだけの場合、遺産分割の協議、調停、審判が必要となります。何を誰がもらうのかを決めないといけないからですね。

(2) 遺産分割協議による分割

家庭裁判所では、遺産について、共同相続人が集まって協議をして遺産を分割することができ、これを遺産分割協議といいます。遺言があってもなくても、これは使うことができます。

でも、遺言で具体的に誰が何をもらうのかすべてについて分割方法が指定されている財産については、遺言に従えばよいので、この遺産分割協議は、通常は必要がありません。

遺産分割協議では、共同相続人全員が合意しないとまとまりませんので、一人でも反対者がいたり、ひとりでも認知症などで判断能力が大きく衰えていると、遺産分割協議はできなくなります。

ポイント:

遺産分割協議では、当事者のすべてに判断能力がなければならない。ひとりでも、認知症の方がいたり、知的障害のある方がいたりすると、そのまま遺産分割の協議も調停もできませんので、弁護士にご相談下さい。

相続人が全員が合意すれば、誰かの取得分を全くないものとすることもできますし、また、遺言と反する合意も可能です。(遺言の意味がそれではないような気がしますが、法的にはそういうこともできるとされています。もらったものをさらにどう分けるのか、それはもらった人がきめてよいという考えがあるからです。)

(3) 遺産分割調停による分割

分割協議がまとまらないときや、そもそも喧嘩状態で協議ができないときは、各共同相続人は家庭裁判所に分割を請求できます。

相続争いで、兄弟姉妹が喧嘩状態になるのは、よくあることです。もしも、あなたが今、そういう状態であっても恥ずかしがらないで下さい。不動産と預金と株券があって、しかも不動産はケーキのように自由に分割できないというような状況で、しかも不動産にはお兄さん夫婦が住んでいる・・・・というような状態では、代理人弁護士がそれぞれの言い分をきちんと代弁して、どうやって解決するかを裁判所で協議しなければ、お互い納得できないのは当然です。親が残してくれたものについては、それぞれ思い入れもがあるでしょう。

実務上、遺産分割調停の申立をします。法律上は、遺産分割の審判をいきなりすることもできますが、家庭裁判所は、この審判事件について、いつでも職権で調停をするようにと命じることができるので、かえって時間がかかるため遺産分割の審判申立をまずする弁護士はほとんどいません。

ほとんどの遺産分割事件は審判の前に、まず、調停を経ているのが実情です。

遺産分割調停は調停委員又は家事審判官が中立的に話し合いに関与し、合意が成立した場合、調停調害を作成してそれが確定した審判と同一の効力があります。

遺産分割協議では協議書をつくるだけなので、その協議書にこういった強い効力はありません。

遺産分割調停の申立てが望ましいパターンとは、どんな場合が望ましいか、まとめてみると、以下のような感じでしょう。

遺産分割調停の申立てが望ましい場合のまとめ

➡ 遺産がある程度価値のある財産であること
➡ 共同相続人の中に、認知症、知的障害者などがいて、判断能力の問題で遺産分割協議ができない場合
➡ 協議をしたが、財産を簡単にうまく分けることが困難な場合
➡ 不動産の価値が高くて、その評価でもめている場合
➡ 不動産を取得する相続人が、代償としてお金の支払いをしないといけない場合
➡ 誰も取得したくない財産が含まれている場合(遠方の田など)
➡ 相続人の中に不当なほど、遺産を取得しようとする者がいる時

個別に、考えてみましょう。

① 遺産にある程度の価値があるとき

遺産にある程度価値があれば、早期解決には意味があります。

遠方の田んぼだけで、相続税もかからないような場合、それを欲しい人が他の人を説得していけばよいだけで、調停までする意味はあまりないでしょう。

けれども、貴方自身が遺産分割を終えて、相続財産(遺産)を早く分けてもらってそれを有効活用したいという思いがある場合、弁護士をたてて調停を申し立てるのはとても有効です。

せっかく残してくれた財産です、公益的なことに寄付をしたり、子どもの学費に利用したり、自分の老後の家の取得資金にしたりと、早く相続争い、遺産争いを解決して取得できればそれだけ有効活用できるのですから、早く自分のものが何かを確定させたほうがよいでしょう。

② 相続人の中に高齢で認知症の方がいる、精神的障害の有る方がいるような場合

こういった場合には、そもそも遺産分割協議ができません。自分が当事者として意思決定ができない人がいるからです。今の相続争いは、相続人も高齢であり、一部の方はすでに老人ホームにいることが多いです。

そういう場合には、調停を申し立てることで解決します。

自分の親族が相続人ならまずその人の後見人に自分なり弁護士を選任してから調停を申し立てましょう。成年後見人が、遺産分割調停でその方の代わりをつとめることになります。

後見人が、遺産分割調停の当事者になるとき、法定相続分を確保できるようにする必要があります。代わりで財産についての協議に参加するので、ご本人の利益を守る必要があるからです。ご本人が判断ができなくなっている以上、勝手に譲歩してすくない遺産の分与を受けるわけにはいきません。そうしないと、後見人の「善管注意義務」という義務違反になってしまいます。

こういった問題があるので、遺産の相続があるような場合、後見人は紛争や善管注意義務に慣れた弁護士がなることがよろしいかとおもいます。

また、そうやって後見人が、遺産分割で取得する財産はなるべくご本人の利益になるものがよいです。具体的には、たとえば住んでいる自宅とか、預貯金等の流動性の高い資産です。

相続人の中に、よく状況はわからないが、認知症かもしれない人がいるような場合、現状がわからなければ、とりあえず申立てをしてみるという選択ができます。

申立書が届けば、その方がきちんと対応できるならするでしょうし、それを期に親族が後見人になってくれたり、弁護士などを立ててくれることが多いでしょう。また、可能ならが、親族として弁護士に依頼してその方の成年後見申立をしてもらってもよいでしょう。

成年後見申立ては、非常に親密な状況でない親族でも、申立はできます。申立に、必要な書類はかなり多く、複雑ですが、弁護士に依頼すればやってもらえます。

(4) 審判による分割

遺産分割調停が不成立となった場合には、審判手続に移行します。

この結果、審判が出されます。これは、家庭裁判所の審判官が民法906 条の分割基準によって、各相続人の相続分にあわせて財産を分けていくというものです。

この結果、金銭の支払、物の引渡し、登記義務の履行などを命じた審判については強制執行ができます。

9 どんなふうに分割できるの?どんな方法があるの?

9-1 一部分割という方法

まず、部分的に、分割の合意をしてしまうという方法があります。

一部分割といいます。

それには、メリットがあります。

一部分割のメリット

➡ 当面の生活費を工面するべきひとがいるような場合、その人の生活が守られます。
➡ 相続財産に債務がある場合、払わないと銀行との関係で問題が起きて、不動産の担保が実行されたりしてしまいますので、一部の不動産とか証券を売ってしまって債務を完済するということができます。

このように、相続の状況によっては、利益となることがありますが一部分割は、残りの遺産については相続争いの問題を、残してしまいます。

つまり、紛争は根本的にはおわらないのです。

また、一部分割そのものが複雑な約束になることもありえますので、弁護士の介在は不可欠でしょう。

一部分割のデメリット

➡ 最終的解決にならない。
➡ 合意内容が複雑になることもあり、合意書の作成が素人には不向き

一部分割まではしないで、家庭裁判所の調停の途中で、いったんある不動産の売却だけ合意して、売却することはとても有効だとおもいます。

たとえば、誰もいらないと考えているワンルームマンションだけ売却しておくなどです。代理人弁護士がいればその代理人の預かり口座にその売却代金をいれておいて、最終の合意まで保管することも可能です。また、生活に困っているたとえば亡くなった方の妻などがいればその人にまずは売却代金を取得させて(ここは一部分割の合意になります)、残りについて調停で協議をして、最終的に合意できなければ審判にという方法もあるでしょう。

9-2 現物分割という方法

現物分割とは、財産をそのまま、この土地は長女に、この建物と借地は長男に、預金は次男にというように、各共同相続人に配分することをいいます。

一筆の土地をいくつかに分筆して分けたり、共有持ち分として分けるのも、現物分割です。

この方法が原則の方法となります。お金にしたりするのは面倒ですからね。

しかし、これにも問題があります。

ほとんどの場合、各相続人の相続分のとおりには、うまくわけられないということです。預貯金で調整ができれば、そういう問題はありませんが、200万の預金、二筆の土地、相続人が子ども3人というような場合にはどうしてもうまく三等分できませんので、現物分割は不向きです。

9-3 換価(価額)分割

相続財産つまり遺産を売るなどしてお金にしてから、それを分ける方法が「換価分割」です。

現物分割だとうまくわけられないときや、相続分の調整するために一部を現物分割し、残りの一部を分割しやすい金銭に変えてから分けるという場合にも、使われます。具体的には、遺産分割調停の最中に株式を売ってしまうとか、ワンルームマンションを売ってしまうというような方法で使います。

そうやってすべてをお金にするなり、一部をお金にしてから分けるのです。

9-4 代償分割

これは、相続財産(遺産)である不動産とか株式などは、相続人中の特定の者がもらい、そのもらった人が、他の相続人に一定のお金を払わせるようにする方法です。

これによって、一部の相続人がお金を払うという債務を負担します。たいていの場合は、多くの土地とか株をもらう人が他の人にお金を払って解決しているので、遺産が多い場合、代償分割はよく使われる方法です。

審判でこの方法を使うには、特別の場合でないとできませんが、遺産分割調停や協議においては、合意でそのような約束ができ、解決に役立ちます。代理人弁護士がいれば、もしもあなたがどうしても今住んでいる家屋がほしいというような場合でも、他の相続人に代償としていくら払うから、家屋をくださいと交渉してくれますので、あなたがほしいものを確実にもらいたいならそのように、交渉してもらいましょう。

【まとめ】 代償分割がよく使われる場合

➡ 不動産に住み続けたい人がその不動産をもらって、一定の金銭を他の相続に払う場合
➡ 農地や事業に使っている資産が相続財産(遺産)で、分けるのが難しい場合
➡ 財産が多岐にわたるので手続が複雑になるため、一人が財産をもらって、他はその者からお金の支払いを受ける形にする場合

注意するべきことは、この場合、一部の者が相続財産すべてをもらって、分割払いをする場合が多く、その支払いがなされない危険があります。ですので、履行の確保に不安がある場合には、遅延損害金を通常より多めにつけるとか、担保の設定をするなど、工夫が必要です。

9―5 共有を用いて分割する方法

不動産を二人で共有するというような方法で、分けることもあります。

預金は金額で分けることができますが、不動産については売却したくないとか、代償を払ってまで欲しいという人がいない場合には、共有とすることになります。

また、審判の場合、うまくわけられないと不動産の共有が残ることは多くあります。

すべての相続財産(遺産)を、相続人の全員の共有とする分割も可能といわれているが、これではあまり意味がありません。

共同相続人がいくつかのグループになっている場合には、グループで共有とすることもあります。賃貸しているアパートを姉妹で共有して賃料をわけるような場合です。

このように共有とした場合には、民法のさだめる「共有」という権利を各自がもつことになります。共有になった人が仲良くそれを使えるならこの解決はよいのですが、そうではないと問題は先延ばしになります。

アパートなど収益がでるもので、仲の良い兄弟姉妹でもらってうまく運用して賃料をわけられるという場合には、よいでしょう。

9-6 その他の分割方法

土地の上に誰かの建物があるような場合、土地は相続財産(遺産)として相続人の誰かが分割の際にもらうが、土地の上に建物を持っている相続人には、賃借権や使用貸借権などの使用権を設定してあげるというような、解決もありえます。

会社を残してもらったような場合には、各自が利益配当を受けるという合意もできます。

このように、いろいろな方法がありますが、このいろいろな分割方法を組み合わせて、現実には遺産分割をしていることが多いですし、それがほしいものを欲しい人がもらえるというよい結果になりますよね。

でも、現実には分け方を考えるのは、代理人弁護士の仕事になってくるので、代理人の弁護士があなたの考えを理解して、実現可能な方法で、ほしいものをうまく自分がもらうよう工夫してもらうのがよいですね。

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