相続の手続

何からやるべきか、相続手続きを相続弁護士がわかりやすく解説

1 はじめに

「父が亡くなって相続が発生した」というようなとき、どうしたらよいか?ここでは、被相続人が亡くなってからやるべき相続手続についてわかりやすく弁護士が、説明します。

「もうすぐ相続が発生しそうだから、色々知っておきたい」

「前に一度相続したけれど、よくわからないまま親類にやってもらった」

など、相続を体験する機会はほとんどの方にあるのに、なかなか手続きを詳しく知っている方は少ないと思います。しかし、重要なのは相続手続きでは「期限がある」ということです。

亡くなられた方の資産や負債を相続するかどうか決めないといけない期限は、たったの3ヶ月

そして、相続税の申告期限は10ヶ月です。

葬儀や法事、家の片付けでバタバタしていて、あっという間に期限が来てしまった、というお話もよく聞きます。さらに、相続や相続税以外にも、様々な手続きに期限があります。

そのため、今回は『相続に関わる期限』と『相続の手続き』についてここで弁護士が詳しくご案内しようとおもいます。円満でスムーズに相続を行うためにも、ぜひ参考にしてください。

2 まず、やらなければならないことは何か?

亡くなられた方がいらっしゃるとき、何をすればいいのか、考えがまとまらないことも多いと思います。特にお忙しい方や特殊な相続になりそうだとわかっていたら、早めに弁護士に相談するのがお勧めです。

それでは、まず「絶対に必要な手続き」からご紹介します。

2-1 絶対に必要な手続き(7日以内)

・死亡届の提出

・(一部の自治体では)死体火葬許可申請書の提出

まず必要な手続きは、「死亡届」の提出です。

亡くなられてから7日以内に「死亡診断書」を持参し、市役所・町役場の窓口に提出することで届ができます。手数料は、かかりません。

死亡届を提出すると、火葬許可証が発行されます。葬儀社で代理でこの辺りをやってくださる場合もあります。

一部の自治体では、併せて火葬許可申請書の提出が必要ですので、死亡届と同時に提出してください。

死亡届を提出すると、法的に死亡が決定し、葬儀等を進めることができます。

2-1 死亡診断書はどうやって取得するのか?

死亡診断書は、医師に作成してもらいます。

故人が病院で亡くなられた場合は、病院の医師が死亡診断書に記入してくれます。自宅など、病院以外で亡くなられた場合は、かかりつけ医や警察に連絡し、遺体の検案をしてもらう必要があります。そして、死亡が確認されると、死亡診断書を記入してもらえます。

一般的に死亡届の用紙は、医師が死亡確認して発行する「死亡診断書」や「死体検案書」と一体になっていて、左側が死亡届記入欄、右側が死亡診断書などとなっています。

死亡届を提出した後に死亡診断書が必要になることもあるはずですので、死亡診断書の部分をコピーしておくか、予備を作成してもらうと、その後の相続手続きがスムーズになります。

2-2 死亡届を出しに行くのは誰?

「自分の親だから自分がいかなければ…」ということはありません。

基本的に、親族であれば誰が提出しても大丈夫です。他にも、故人の同居人・家主、地主、後見人等も死亡届を提出できます。この届出は義務ですので、必ず提出しましょう。死亡届へは、死亡者の氏名・生年月日・配偶者情報・本籍などを記入しますので、戸籍に登録されているとおりになっているか注意しましょう。

その他、届出人の氏名・住所・連絡先・本籍・死亡者との関係などを記入します。

死亡届への署名や押印は届出人が自分で行わなければなりませんが、ご親族は忙しかったり、精神的なショックから、実際に窓口に持参するのは難しいので、代理人がいくことが多いでしょう。火葬許可申請を葬儀会社が代行して手続きすることも多く、そのため、死亡届は葬儀会社の方が役所へ持参するということが、よくあります。

また、火葬については、原則として死亡から24時間経過しないと行えません。

火葬については火葬場のスケジュールも関係してきますが、まずは死亡届を提出することを最優先しましょう。

火葬許可証が発行されたら、火葬についての手続きを進めることができます。

この手続きは自治体によって異なりますので、詳細が不明な場合は死亡届提出時に職員に相談してみましょう。

3 その後、適宜こなしていきたい手続き

・親族などへの葬儀等の連絡

・葬儀等の準備

・年金受給権者死亡届を出す(国民年金は14日以内、厚生年金は10日以内)

・未支給年金請求の届出(被相続人の年金の支払日の翌月の初日から5年以内)

・被相続人の介護保険資格喪失届(14日以内)

・世帯主の変更届(被相続人が世帯主であり、残された世帯員が2名以上のとき)

死亡届を出した後は、これらの手続きを進めていきます。

多くの手続きが一段落したら、相続のための準備を始めましょう。

4 相続のための準備はどんなものがある?

葬儀から1ヶ月ほどでおよそご家庭も落ち着いてくるかと思います。

ここで大事なのは、相続放棄の手続きの期限は3ヶ月。

そのために準備を始めていく必要があります。

5 遺言書を確認する

故人が遺言書を残している場合は、遺言に従って相続がされるのが普通です。

そのため、遺言書があるかどうかをまず確認しましょう。

相続について親族で話し合った後に遺言書が出てくると、遺産分割協議がやり直しになったり、相続人へ同意を取ったりする必要が出てきてしまいますので、注意が必要です。

故人が公正証書遺言を作っているかどうかについては、公証役場にて確認できます。

遺言には種類があるので、それによって手続きが異なります。

遺言については、お気軽にお問い合わせください。簡単なことであれば無料メール相談をいたしております。

6 法定相続人を決定する

法定相続人が誰になるかは、遺産分割協議を始める前に確認が必要です。

相続は、法定相続人や包括受遺者全員が遺産分割協議という協議で成立し、効力を有します。そのため、相続人に欠けがあると、協議を始めることができないのです。

非嫡出子など、思わぬ相続人が現れることもありますので、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を改めて確認しておきましょう。

7 相続財産の調査をする

相続する財産についても調査が必要です。

財産とは、現金や土地、建物、自動車だけではありません。株式や美術品も該当しますし、借金やローンも相続財産に含まれます。まずは、どんな資産があるかを明確にすることが大切です。

特に銀行預金については、金融機関に死亡を届け出ると口座が凍結されるので注意しましょう(令和元年7月1日に改正民法が施行され、一定額までは故人の銀行口座から預貯金を引き出すことができるようになりました)。

債務(住宅ローンや消費者金融など)についても調べましょう。

8 相続開始から3ヶ月以内に必要な手続きがありますので、注意。

相続については故人が亡くなられてから3ヶ月以内に、「自分が相続するか否か」を決めなくてはなりません。そして、相続すると決めたら、遺産分割についての資料を用意しましょう。

特に、故人に債務(借金)が多いあ場合は、相続しない方がいいケースもあります。

そうならないために、いくつかの制度を知っておきましょう。

  • 限定承認を行う

限定承認とは、相続した財産の範囲内で、借金も含め相続する方法です。

たとえば、プラスの財産が3,000万円、マイナスの財産が5,000万円ある場合、限定承認を利用することで1,000万円分の遺産を相続し、かつ1,000万円の債務を相続することができます。その結果、相続はプラスマイナスゼロとなります。

この制度を利用する場合、共同相続人全員で手続きをしなければなりません。相続割合でトラブルがあると合意まで時間がかかりますから、早めに話し合いを進めましょう。

  • 相続放棄する

借金等故人に債務が多い場合、被相続人の財産を全て放棄し、全く相続しないという選択肢があります。この「相続放棄」を検討できるのも、3ヶ月以内になります。

限定承認や相続放棄については、どうしてもこの期間内に決められないという理由があるならば、家庭裁判所に「相続の承認または放棄の期間伸長を求める審判」を申し立てましょう。

9 相続すると決めたなら、遺産分割協議です。

相続すると決めたら、遺産分割協議の準備に入ります。

相続人の間で、遺産の分配について協議し、内容を書面にします。

この「遺産分割協議書」の作成について期限はありませんが、相続税の申告が必要となる場合には、10ヶ月以内に作成して納税する必要があります。

10 相続開始から10ヶ月以内に必要な手続きは?

相続税の手続きは、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。

10ヶ月を過ぎてしまうと相続税の申告漏れとなります。また、実際の財産より少ない金額を申告した場合、加算税・延滞税が掛かる場合がありますので、どちらにも注意しましょう。

また、相続税には基礎控除があります。ただし、配偶者控除やその他の特例制度を利用する場合には、申告が義務となっています。

同時に、相続登記の申請(不動産の名義変更)についても、相続税の申告の関係上、10ヶ月以内に行う必要があるケースがありますので、この点にも注意してください。

遺産分割等の協議がまとまらず、相続税の申告期限が来てしまいそうなときは「未分割の申告」という制度が利用できます。各相続人が法定相続分を相続したものと仮に決めて、一旦納税を行い、その後協議がまとまった時点で改めて修正の申告を行って正式な納税を行います。

この手続きを行うことで、延滞税などの余分な税金の支払いを避けることができるでしょう。

遺産分割調停を続けているような場合には、相続税の申告期限を経過してもこの申告をすることで不利な結果になりませんので、きちんと申告をしましょう。

11 相続開始から1年以内に必要な手続きは?

遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)の権利を行使したい場合、期限は、「相続により遺留分が害されていることを知ってから1年または相続から10年」となっています。

これは、兄弟姉妹を除く法定相続人に認められた最低限の遺産の取り分(遺留分)を取り戻すための手続きとなります。

そのため、相続においてこの手続きを行うケースは多くはありません。

こちらを請求する立場や請求される立場になった場合は、請求期限もありますので、まずは専門家に相談することをお勧めします。

12 相続がうまくまとまらないときは?

遺産の相続の際には、相続人で誰が何をもらうのか決めないといけませんが、不動産があったりアパートがあったり、収益不動産(ワンルームマンション)とか資産運用会社があったりと、首都圏のある程度資産があるケースは試算も複雑です。

どうしても、当事者のみでは協議ができません。

遺産分割協議がまとまらない場合、適宜、弁護士をいれての協議を検討しましょう。

協議をまとめるには以下の3種類があります。

・弁護士を入れて遺産分割協議書を作成する。

・家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる

・家庭裁判所に「遺産分割審判」を申し立てる(通常はまずは調停を申し立てます。)

協議と調停の場合、「話し合い」をすることなります。調停では、裁判所の部屋での話し合いとなりますが、これは「裁判」ではありません。

それでもまとまらないと「審判」を使いますがこれは裁判所による「判断」がされる手続きとなります。

原則として「調停前置主義」といって調停から始める方針が採られているため、「遺産分割協議」、「遺産分割調停」を経て審判になります。弁護士が介在すれば審判までになるケースは非常に少ないです。弁護士が整理することで紛争がまとまりやすくなるからです。

遺産分割調停では、当事者がそれぞれが別々に、相手や調停委員等に自分の主張を整理して伝えていきます。調停委員等が間に入り、双方の主張を把握・整理していきます。原則として本人の出席が必要になりますが、弁護士を頼んでおけば代理人として弁護士が出席するのみで調停を進められるメリットがあります。

13 まとめ

相続は、相続人全員が納得する形で円満に進めるのが理想です。

また、各手続きには期限がありますから、なるべく早く協議を進めていく必要があります。

期限を過ぎてしまうと権利が行使できなくなったり、権利が消滅したりしますので、重要な手続きについては、必ず期限内に行いましょう。

特に「相続放棄」など期限が迫っているケースや、手続きが煩雑でわからないとき、他に親族間でトラブルが起きそうなときなど、相続がスムーズにいっていないと感じたときは、後に後悔しないためにも弁護士など専門家の力を借りることをお勧めします。

また、アパートなどの収益不動産がある場合にも、家賃をどうするかということを相続人で話し合っておかないと紛争になります。なるべく早く弁護士に相談しましょう。遺産に不動産が含まれている場合には、遺産分割協議書についてはきちんと弁護士に診てもらった方がよいでしょう。口約束とか簡単な合意書を作ってしまって後で大きなトラブルになっている例はかなりあります。

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